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理論編
便秘や生活習慣病はもちろん
がん予防まで効果を発揮する
カスピ海ヨーグルトの乳酸菌
京都府立医科大学名誉教授
(財)ルイ・パストゥール医学研究センター理事長
医学博士
岸田 綱太郎
(財)ルイ・パストゥール医学研究センター
基礎研究部 有用微生物研究室室長
赤谷 薫
普通のヨーグルトにはない
乳酸菌が独特の粘りけを作る
ヨーグルトは、乳酸菌が牛乳の乳糖から乳酸を作ることによってできます。多くの市販のヨーグルトでは、ブルガリア菌、サーモフィラス菌やビフィズス菌などの乳酸菌のうち、複数の菌株を種菌として用いています。ところが、カスピ海ヨーグルトには、2種類の乳酸菌と、1種類の乳酸菌ではない菌が含まれているのです。
そのなかで最も多く含まれているのがクレモリス菌(学名ラクトコッカス・ラクティス亜種クレモリス)という乳酸球菌です。このクレモリス菌は、乳酸を作ると同時に、多糖体の粘性物質を作り、菌の周囲に放出します。この粘性物質こそ、カスピ海ヨーグルトが持つ独特の粘り気の正体なのです。
北欧フィンランドでは、カスピ海ヨーグルトによく似た、クレモリス菌を使った「ヴィリ」という発酵乳が市販されています。このヴィリのクレモリス菌が作る粘性物質には、抗腫瘍作用や、免疫力を活性化する作用があることが明らかになっています。
カスピ海ヨーグルトに含まれているもう1種類の乳酸菌は、リューコノストック菌という乳酸球菌です。この菌は乳糖を分解する力が弱く、ヨーグルト中にはクレモリス菌に比べて少ししか含まれていませんが、ヨーグルトの風味に影響を与えているようです。
乳酸菌のほとんどは酸素があってもなくても増えることができる性質を持っています。しかし、
カスピ海ヨーグルトに含まれる3つ目の菌、グルコノバクター桿菌は酸素がなければ増えることができない「好気性」の細菌です。グルコノバクター桿菌は乳酸菌ではありませんから、乳酸を作ることはできませんが、乳酸菌の増殖や粘性物質の生産を助ける環境を作ります。
作って時間がたったカスピ海ヨーグルトの表面にクリーム色の膜ができたようになることがありますが、これはグルコノバクター桿菌の集まりです。
カスピ海ヨーグルトでは、これら3種類の菌がうまくバランスを保ち、それぞれが増えやすいように協力しあっているようです。
温度が37℃〜42℃くらいの温度で良く増える市販ヨーグルトの多くの菌とは違い、カスピ海ヨーグルトの菌は20℃〜30℃で良く増えます。
牛乳にこの3種類の菌を含む種を植え付けると、室温ですみやかに増えて酸性になり、腐敗菌など他の菌の増殖は受け付けにくくなります。これが、カスピ海ヨーグルトが家庭で簡単に作ることができ、保存もしやすいということの理由でしょう。
牛乳はもともと優れた栄養食品ですが、ヨーグルトは牛乳に比べて、タンパク質やカルシウムなどの栄養成分の消化吸収がさらに良くなっています。
乳酸菌は一般に、次のような多くの健康保健効果を持っています。@腸内菌叢のバランスを保つ効果、A腸管運動を促進して便通を良くする効果、B発がん物質などの有害物質を吸着して排出する効果、C免疫器官を刺激して、体の抵抗力を高める効果、Dコレステロールの吸収や合成を抑えて血中コレステロールを下げる効果、など。まだ実証はされていないものの、カスピ海ヨーグルトの乳酸菌にもこのような効果の多くが期待されます。
世界の三大長寿地域として知られているコーカサス地方で現在も愛飲され続けているカスピ海ヨーグルト。これさえ食べれば寿命が延びる、とまではいかないでしょうが、健康維持の一つの手段として、みなさんも毎日の食生活に取り入れてみてはいかがでしょうか。
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